12月1日あきた郷土作物研究会設立記念フォーラムを開催しました。(場所:カレッジプラザ)

2013年12月1日 「あきた郷土作物研究会」設立記念フォーラムが「郷土作物・食文化を彩るその特別な価値」と題して90名の方々のご参加のもとに開催されました。農業者、消費者、飲食店、小売店、流通関係、食関係、医療、研究、行政、教育関係と実に多彩な方々が集まってのスタートとなりました。その模様の一部を紹介します。 


◎設立総会

会長 吉澤結子(秋田県立大学生物資源科学部教授)
会長 吉澤結子(秋田県立大学生物資源科学部教授)

フォーラムに先立って総会が開催され、正式に研究会が設立し、即日60名が正式に会員となりました。選任された役員は次のとおりです。(規約は当Webサイト参照)

 

     会    長  吉澤  結子        

     副  会 長  米本かおり        

             吉尾  聖子        

     幹    事  鐙     啓記        

  加藤  正哉        

椿     信一        

     事務局長  櫻井  健二        

     会計監査  森岡  正裄        

                      大友  幸憲        


◎講演 「在来作物・郷土を彩るその特別な価値」

講師 山形大学農学部准教授 江頭宏昌先生

講師の江頭先生
講師の江頭先生

■作物とは

 人間の管理がなければ作物が育たず、作物がなければ人間は生存することができないことから、作物とは人間と共生関係にある植物である。経済を考えないわけにはいかないが、利益の為だけにあるのではないということも理解する必要があります。 

 

■在来作物の定義と特徴、伝統野菜との違い

 在来作物研究の先駆者で元山形大学の教授の青葉高先生は、在来種を「生きた文化財」と提唱し、保存を訴えてきました。2003年に発足した山形在来作物研究会は、これを受け継ぎ、“在来作物”を「ある地域で、世代を越えて栽培者自身が自家採種などによって栽培・保存を続けながら生活に利用してきた作物をいう」と定義しました。

 一方、「伝統野菜」は、行政や生産、流通関係がブランド化、差別化のために一定の基準を設けて定義した場合が多く、野菜に特化しています。

 あきた郷土作物研究会の「郷土作物」はさらにそれより広い定義で、自家採種には言及せず、食文化との重要性を強くしているのが特徴です。(郷土作物について当サイト参照)

 

■在来作物消失の原因と受け継がれてきた要因

 なぜ、お金にもならない手間のかかる在来作物を継承してきたのでしょうか。生産者にお聞きすると、「おいしいから」「慣れ親しみ、喜ぶ人の顔がみたいから」「先祖代々伝わってきた種子を、自分の代だけでなくすのは申し訳ないから」と言います。山形県にはカブの在来品種が多いのですが、「夏のさぶい年はかぶらまけ」という言い伝えがあるように、夏に種子を播くカブは飢饉回避の知恵だったことがわかっています。種子に込められた想いがあるのです。

 こうした在来作物を食することで私たちは、何百年も前の人々の味を追体験することができるのです。

 

■在来作物の活用~ 時代の価値観を越えて

 在来作物の魅了を左右するものに「時代の価値観」があります。例えば、現在275億円の産出額になっているサクランボの佐藤錦は、大正時代に作出され、戦時中の混乱期を経て密かに守られ、60年後に評価されたものです。また、ダダチャ豆も、サヤに二粒しか入らない見た目から、地元で食べられるだけのものでした。1992年頃から雑誌やCMで紹介されて一気に人気が高まったものです。時代によって評価は変わるという例で、今、評価されないから価値がないのではないということがわかります。

 地域を元気にする必要条件は次の四つが考えられます。

 

 1 ここにしかないものを見つける、なければつくりだすこと

 2 それを地元の人が誇れること

 3 地元内外の人が楽しんで利用していること

 4 リアルタイムに新しい情報を発信すること

 

 在来作物があれば、地域が活性化するわけではなく、一見効率の悪い在来作物になんらかの「創造」を加え、情報発信するこが必要です。たとえば、アルケッチャーノの奥田シェフは、古くさいイメージの在来作物を「新しい」食材へと価値観を変えました。藤沢カブは、レストランのメインメニューになることで復活しました。しかもその“カブを焼く”という料理は、シェフが実際に焼き畑の現場に立ったからこそ生まれたものです。宝谷カブは、全国の“かぶ主の集い”によって支えられています。地元新聞などもが記事を掲載することも大きな展開のきっかけになっています。

 教育の場面でも在来作物を通じて地域の歴史や食文化を伝える活動が様々にされています。また、行政では鶴岡市は鶴岡食文化創造センターを設置し、ユネスコの「創造都市ネットワーク」に日本で初めて食文化で加入しようとしています。また、山形で開催される2014年のJRのディステネーションキャンペーンに供えて、ダダチャ豆ゾーンや鶴岡在来野菜ロードなどを在来作物に関する旅行企画を提案しています。

 

■在来作物の三つの価値

会場から、活発なご質問を頂戴しました。
会場から活発なご質問

 人間との共生関係にあるという植物としての

  “命を支え合う価値”

 地域のシンボル、地域の誇り、地域の個性となる

  “そこにしかないという価値”

 地域の歴史や文化を伝える、時空を越えて人や社会産業をつなげる

  “メディア(媒体)としての価値”

の三つの価値があります。

在来作物は、利用の仕方で様々なコミュニケーションを生み出すことができます。これからのあきた郷土作物研究会の発展をお祈りしています


◎生産地からの報告

石沢英夫さん
石沢英夫さん

「山内にんじんの復活のために」

山内にんじん生産者の会

会長   石沢 英夫 さん

 

 山内にんじんは、横手市山内地域で昭和20年代に札幌太から選抜され山内にんじんと名付けられた品種。根長が30cm程にもなる大きなにんじんで、「香りが強くて甘い、芯まで赤い、硬く煮物にしても崩れにくい」という特徴があります。

 平成17年に山内にんじんが県の伝統野菜に認定されました。しかし山内では生産者が2人、栽培面積は2 aになっていました。これでは山内にんじんが欲しいと言われた時に応えることができないと、なんとか生産しなければと考えました。種屋さんで売られている山内にんじんの種子を植えてみたりしましたが、どこか違う。そこで、昔から栽培している人の種子を農業試験場に持ち込んで選抜してもらい、今年からスーパーのタカヤナギさんに出すまでになりました。またいぶりにんじん用にも好評です。

  しかし、普通のにんじんと比べても太くて長いので収穫は大変です。高齢者にはきつい作業ですが、山内にんじん生産者の会では、なんとかこのにんじんを守っていこうと思っています。12月15日には山内にんじんフェアを、道の駅「農家庵」と、あいのの温泉の直売所「山菜恵ちゃん」で開催します。ぜひおいでください。

倉田雅章さん
倉田雅章さん

「横沢曲がりねぎの今」

           生産者  倉田 雅章 さん

 

 横沢曲がりねぎは、江戸時代から受け継がれてきた在来種で、柔らかくて香り成分のアリシン含量が通常のネギより多いため、独特のぬめりと香りが特徴です。さらに普通のネギは1年で収穫されますが、播種から収穫までじっくりと2年余りをかけ植え替えて「ねせる」ことで、より柔らかくより風味が増します。青い葉ネギまで食べられる、まず、うまいネギです。ただ曲がっているし、良く割れる(分けつする)ので調整作業が大変です。

 横沢地域には佐竹北家の参勤交代の本陣があります。水戸から異封されてきた佐竹家の殿様は、このあたりがお狩場で、よく狩に来たようです。そのときに泊まった倉田家のもてなしがあまりに良かったので、水戸から持ってきたネギの種子とその栽培の方法を与えたのだと伝えられています。

横沢曲がりねぎ
横沢曲がりねぎ

  この地域の黒ぼくの土壌もあっていたのだと思います。「横沢ねぶか」と言われ、地域に広がったようです。江戸時代の紀行家・菅江真澄も紀行文に残しています。
  
昭和54年には生産部会ができて、平成3年には20戸で150 aを栽培して出荷していましたが、手間がかかる割には値段が取れず、現在は、直売やインターネット通販などで販売をしています。毎年、止めようかと思うのですが、やはり、前の年から作った苗を見ると、求めてくれる人がいる限り、自分の代だけでも作付けしていこうと思っています。

梶原啓子さんと能代北陽高校生徒さん
梶原啓子さんと能代北陽高校生徒さん

 「檜山茶保存の取組み」

 北限の檜山茶保存会 梶原啓子さん

     能代北陽高校生徒さん         

 

檜山茶は、1730年頃の檜山の殿様(多賀谷氏)の自家用茶園が始まりで、その後、武士の内職として広まり、最盛期は10 haあったといわれます。しかし時代の変遷により、現在はわずか30 aを残すのみとなりました。この檜山茶は緑茶として、日本はもちろん世界的にも北限とされます。また、これまで改植などされていないといわれ、茶樹は250年以上と推定されます。

 このような貴重な檜山茶の伝統を後世に残すため、檜山茶保存会によって保存活動が行われております。 活動内容は、檜山茶の製茶・販売の他、PR活動として「檜山茶フェスティバル」の開催、「手摘み・手揉みの体験」などを実施しております。また、定期的に日本茶インストラクターの畠山先生を講師に製茶技術の向上に取り組んでいます。一方、能代松陽高校では、平成20年度より、檜山茶の支援活動を実施しており、摘み取り加工の手伝いをはじめ、檜山茶を活用した商品開発を行っています。今年度は「紅茶」開発に取り組んでいます。この紅茶は発酵の段階で「白神こだま酵母」を利用しているのも特徴で、来年度の販売を目指して取り組んでいます。

北限の檜山茶の茶園
北限の檜山茶の茶園

現在ボランティアによってこの檜山茶は支えられています。しかし、無償ボランティアを頼っているだけでは、継続は難しく、日々悩んでいますが、今日の江頭先生のお話をいただき、改めて継続する意義を確認しました。発表の機会をいただき感謝します。ぜひ皆さん茶摘みにお越しください。


◎あきたの郷土作物の展示

 会場のカレッジプラザの一室に、季節の野菜などを展示し、三関セリや山内いものこなどおなじみの野菜から、雲然柿や大館地大根などのあまり知られていない野菜や果物、すでに栽培者がいない沼山大根や三八大根(県農業試験場の試験栽培)などを紹介しました。またカナカブ漬けや平良カブ糀漬け、新処なすの菊花漬けなどを試食。作物の特徴や食べ方、入手方法などの情報交換をしました。


◎交流会 「秋の郷土作物を味わおう」  

 秋田キャッスルホテルでの交流会には、40人の方々が参加。湯川智行農業試験場長の乾杯の後、郷土作物の料理などを囲んで、和やかに懇談しました。全員の自己紹介がありましたが、それぞれの場で個別の作物に深く関わっている方、事業に活かしたい方、これから学びたい方など立場は様々です。皆様、秋田ならではの作物で、食と農業を盛り上げたいという想いにあふれていました。


この他にも、会員の方が、自身のブログなどで、レポートを掲載してくださいました。こちらもぜひご覧ください。

 

デリカテッセン紅玉ブログ(横手市 高橋基さん)

 

ドクターライフサポートブログ(岩手県盛岡市 宮田恵さん)

 

丸果秋田県青果株式会社定期掲載 「社長室前から」(田口多喜子さん)